2025年4月新規スタート
中島尚志の『The Base』
「総合診療」としての「外科学」
日本の経済状況は明らかに悪化を実感できる状態になり、医療でもヒトの病院の過半数が赤字で、さらに獣医療でも廃業、倒産件数が2013年以降で最多となりました。したがって、獣医師は、これまでのように未来を夢見て発展をめざすこととあわせて、現実を見据えて生存戦略を構築することが重要になってくると考えています。
そして、その生存戦略のキーワードは、おそらく、ちょっと古い言葉ですが、「多様性」と「選択と集中」になると思います。動物の寿命が伸びたことと、多くの疾患は中齢期以降に発症することから、現実の診療では複数の基礎疾患を持つ動物が診療の中心ではないでしょうか?そんな症例たちには、単一の病気にたいして構築された「獣医学」や、差別化というコンサルの言葉に乗せられて始めた「劣化版の専門医療」は無力であり、病気ではなく個々の症例に視点をあわせた、多様性のある「獣医療」を行なうことが最善の方法になります。
また、獣医診療における現時点での「多様性」と「選択と集中」の具体的な最適解は「総合診療」と「外科」だと思います。一見、両者は矛盾するようですが、全身すべての臓器を対象とする点、病態を理論的に探査していく点に関して同様であり、個体の病態を追求する獣医療を行なうには両者はとても相性がいい組み合わせになります。
「The Base」ではこれからの獣医臨床で最も有効な、この「総合診療の視点を取り入れた外科学」を2年間、全20回にわたって開催していきます。人生を楽しみ、動物を助けて、加えて一定水準の獣医療を維持するための、経済力をもつための生存戦略を一緒に学んでいきましょう!