肛門領域の腫瘍にたいする治療は、やはり他の臓器と同様に、現時点では外科的切除が最も有効と考えられます。しかし、欧米で便失禁にたいする忌避感が強いために、獣医領域におけるこの部位の切除-再建手術に関する情報はきわめて限定的であり、肛門領域の切除-再建術式は系統的にまとめられていません。 今回は肛門領域の腫瘍にたいする手技を、ヒトで階層化された理論を参考に、切除領域に合わせて以下のようにまとめてみました。(名称はヒト医療に準ずる) - ①肛門括約筋を含まない表層の部分切除
- ②肛門括約筋と肛門管の一部を含んだ部分切除
- ③肛門括約筋を含まない肛門管-直腸の切除(会陰式低位前方切除術)
- ④肛門括約筋を含まない肛門管-直腸の切除(Pull-Through)
- ⑤肛門括約筋と肛門管-直腸を含んだ切除(会陰式直腸切断術)
- ⑥肛門括約筋、肛門管-直腸、尿道を含んだ切除(骨盤腔内臓器合併切除術)
それぞれの術式の適応やポイント、ピットフォールを解説していきます。日本では延命あるいはQOLを維持するためにこれらの手術を希望する飼い主はけして少なくないと思います。ぜひ先生方のレパートリーにこれらの手技を加えてください。
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